前回、「情動」の「生理反応」、「行動反応」、「感じ方」のクセに気づく方法として「マインドフルネス」を紹介しました。
今回は、そうした「生理反応」、「行動反応」、「感じ方」のクセをどのように自己管理するかということについて考えます。人が意識的に制御できうるのは次の2と3です。
- 「生理反応」は無意識的で、意識「言語」では直接制御できない。
- パターン認識(象徴や言語)「考え方」は意識的に選択可能。
- 「随意筋による動作」は選択可能。
しかしながら、「情動」を構成する環境刺激に対して学習された「生理反応」、「行動反応」、「感じ方」のクセを直接的に制御することが難しいことを前回紹介しました。
「自己制御(Self-control)」と「自己管理(Self-management)」は異なります。「自己制御(Self-control)」は、自分の目的にそって思い通りに支配して動かそうとすることです。それに対して「自己管理(Self-management)」は、対象の特性を大切にして自発的な動きが引き出される条件を整えることです。
自分のことは自分が支配していると考えている方は多いと思います。けれども、その思い(力み)がかえって苦痛を生み出すことがあります。最近、「新型コロナウィルスの感染が心配で外出ができない。心配なく外出したい」という相談を受けました。「心配をなくしたい」という「自分の思い通りに情動を支配しようとすること」が実現できなくて苦しむのです。私は、「心配をなくそうとするお気持ちとても辛いと思います」、「ただ、心配が全くなくなって外出するのはとても危険ではないでしょうか?」、「心配しながら安全に生活に必要な外出ができるようにすることが大切と思います」とお応えしました。情動「心配」「不安」も必要な身体の働きなのです。
環境に対応して起こる「生理的反応」による心配をしながらも、「行動」や「感じ方」のクセに振り回されることをいったん脇において、「考え方」や「行動」を行うことができるような「からだ」が整うための自己管理が必要です。
私は長年「動作法」による支援を行ってきました。動作法は、Naruse(2000)が日本で独自に開発した身体の動作を使った心理療法です。直接触れて支援を行ってきましたが、オンラインでの支援においては、触れずに「一緒に動作を整える」次のような活動を一緒に行っています。
「直の坐位姿勢を整える」ワーク(あぐら坐、椅子坐位)
<準備の姿勢>:椅子座位では、お尻を座面につけ、足裏を床につける。
- 右のお尻に体重をかけた感じを感じる。
真ん中に戻す。(左にも同じにする。) - 腰を後ろに倒した感じを感じる。
腰をまっすぐまで起こしてくる。 - 身体と腰を前に倒した感じを感じる。
- お尻の上に腰、背中、上体をまっすぐ起こす。
動作と姿勢を整える時のコツ
- 「きつさ」や「痛み」を感じたら無理しない。
- 身体の感じに注意を向けて、動きが止まったところで、「きついなぁ」、「痛いなぁ」と価値判断しないで気づく。
- 呼吸は止めない。無理に深呼吸をしない。自分の楽なやり方で息を吸い、ゆっくり息を吐くとともに、わが身を整える。
- いろいろな考え(雑念)が浮かんだら、「○○と考えたなぁ」と気づいて、ふたたび身体の感じに気づくようにする。
この部分は、マインドフルネスを参考にした宮﨑独自の方法です。