前回、ソマティック・エクササイズについて、身体と気持ちを整えて自由度を広げる①「触れる・離す・感じる・気づく」方法について紹介しました。今回は、ストレスに直面した時の②「自分のクセに気づいて整える」方法について紹介します。
(1)自分のクセをどうやって知るか?
「人のふり見てわが振り直せ」という諺があります。他人のクセはよくわかりますが、自分のクセには気づきにくいものです。
まずは、その日の自分の体調や身体感覚に気づくことが大切です。私は、毎朝、仏壇にお線香をあげて亡くなった両親の名前を唱えて先祖の冥福を祈っていますが、その日の体調によって集中できる時と妙にいろいろな雑念が浮かんでしまう時があります。真言宗の檀家としてのお勤めの意味もありますが、心理学的には「自分のこころとからだの状態に気づく」ための時間ともなっています。
(2)動作課題による気づいて整える体験
私は、若い時にギックリ腰を経験してから腰痛というストレス反応があり、65歳を過ぎてから背中が丸まってきたことに気づきました。そこで、今は毎朝、「腕上げ」、「躯幹のひねり」などの動作法の練習をしています。
動作法は、動作を使って様々な心身の不調を整える心理支援の方法です。もともとは、脳性麻痺などの肢体不自由の方の自由に動かしにくい動作を改善する技法として開発されました。図2021-7-1は、動作課題「躯幹のひねり」を援助者と一緒に行う様子です。私は次の手順によって自分一人で行っています。
- (準備):横向きに寝て、右腕は床につける。呼吸は楽にしている。
動き始める前の準備状態が大切です。私は、自分がすぐに動き出したい衝動に気づくことがあります。そんな時に、前回のボディスキャンの要領で、横になった自分のからだ(脚、腰、背中、肩、腕、首など)の状態に注意を向けて気づいていくことを行い、準備状態を整えます。 - (開始):右腕をゆっくり上げると共に、上体をゆっくりひねっていく。
右腕を床から離して、ゆっくり上から後方の方向に動かし始めます。この時、右腕と一緒に上体もひねっていくことになります。 - 課題動作の中で起こる身体の感じに気づいて、良い・悪いと価値判断しない。
どのスピードが良いのかとか、どの方向が正しいのかなどと価値判断をしないで、今の腕と上体が自然に動いていく時の躯幹や首や腰のからだの感じにただただ気づいています。 - 自分の自然な楽な呼吸を続ける。
こうした動かすという能動的な活動をするときに「呼吸を止めて頑張る」クセが出ることがあります。呼吸が止まっていたらそれに気づいて自分の自然な楽な呼吸をすることに気持ちを向けます。深呼吸をする必要はありませんが、深呼吸をしてはいけないわけでもありません。 - (緊張・クセ):腕や上体が動きにくいなど引っかかるところを感じる。
腕と上体を動かしていくと、動きが引っかかったように止まったり、きつさや痛みを感じたりするところが出てくることがあります。そこが、「動作定型」のクセが活動の自由度を妨げているところです。動作法では「緊張」と呼んでいます。この緊張に気づくことが大切です。 - (緊張・クセへの対応)
「緊張」に直面した時に、きつさや痛みを感じたら、無理をしないことが大切です。私はこれまで「緊張を何とかゆるめて楽になりたい」などと考えては、いろいろと力んで動かそうと対処してきました。しかし、力めば力むほどきつさや痛みはひどくなることがありました。練習を終えた後も痛みが残ってしまうことがありました。
また、「もっと動くはずだ」とか「もう、やめよう」とか、いろいろな考え(雑念)が浮かびます。その時には、そうした考えが浮かんだことに気づいて、そっと身体の感じに気づきをもどします。
「おまかせ」という何もしないで、からだと「緊張」と「雑念」がどうなるか、ただただ見守って気づいていることの大切さを身にしみて感じるようになりました。 - (もとの準備状態に戻る)
図には書いてありませんが、躯幹をひねった状態から元の準備状態にもどる動作もとても大切です。自分のからだを無造作にもどすのではなく、腕と上体をもどしていく時の躯幹や首や腰のからだの感じを見守って気づいています。そして、元の準備状態になった時に、最初のからだの感じとどこがどのように違っているのか味わいます。
こうして、右ひねりが終わったら、次にゆっくりと左ひねりを行います。