コラム

自己管理Self-management 「レジリエンス」

 前回は、自己管理Self-managementの「個人や集団の目標達成の動機と力の感覚」について「解決志向アプローチ」(O’Hanlon 1992)とムーリー・ラハド博士の「BASIC-Ph」を紹介しました。今回は「レジリエンス(resilience)」について考えます。

 Resilienceの英和辞典による訳は、「はね返り・弾力、元気の回復力、[物理・機械]弾性エネルギー」です。APA心理学大辞典では、「外的、内的要求への心的、情緒的、行動的柔軟性や調節によって、困難で挑戦的な体験に適応する過程や結果」と定義されています。これらの説明から分かることは「弾性(一度へこんでも元に戻る性質)」があることと、元に戻るための資源や思考、情動、行動の方法を使えるようになることです。図 2021-10-1のように模式化できます。

 

ストレスに対するへこんでも回復できる強さ:レジリエンス

図2021-10-1 ストレスに対するへこんでも回復できる強さ:レジリエンス

 

 これに対してハーディネス(Hardiness)は、APA心理学大辞典で、「予期せず起きた変化に対して容易に適応することができる能力を指す」とされ、「例えるならば、頑健な運動選手が病気や怪我をしにくいようなもの」と説明されています。この説明からわかることは、へこまない力と考えられます。図 2021-10-2のように模式化するとレジリエンスとの違いが分かりやすいと思います。

 

ストレスに対してへこまない強さ:ハーディネス

図2021-10-1 ストレスに対してへこまない強さ:ハーディネス

 

 平野(2015)は、レジリエンスの研究から、資質的レジリエンスと獲得的レジリエンスの要因からなる「二次元レジリエンス尺度」を開発しています。その下位尺度は次の通りです。

<資質的レジリエンス>

  • 楽観性:どんなことでも何とかなるという感覚
  • 統御力:体力と忍耐と落ちつく力
  • 社交性:親しい人間関係が得意
  • 行動力:粘り強く最後までやりとおす力

<獲得的レジリエンス>

  • 問題解決思考:情報を集め、経験から学び、誤解を解く。
  • 自己理解:自分の性格、気持ち、考え方を理解している。
  • 他者心理の理解:人の気持ち考え方を理解し、思いやりがある

 獲得的レジリエンスは、社会性と情動の学習のSelf-awareness(自分への気づき)、Social awareness(他人への気づき)、Relationship skills(対人関係の問題解決スキル)で高めることが出来る能力です。

 

参考文献

  • 平野真理(2015)レジリエンスは身につけられるかー個人差に応じた心のサポートのために. 東京大学出版会.