今回は、人間関係のスキルRelationship skillsからちょっと横道にそれて、世界のSELの状況のデータが出ていますので紹介いたします。
米国Six secondという組織は2011年より世界のEQデータのレポートを続けています。EQは「社会性と情動の学習SEL」が目指している能力です。2020年のデータは、この10月に「State of the Heart 2021」というレポートで発表されました。その中から宮﨑が印象に残った内容を紹介いたします。
このデータを見て、何よりもショックを受けたのは、世界の地域の中でアジアのEQが他の地域よりも格段に低かったことです。特に内発的動機付けの得点が他の地域と比べて際立って低いことが示されています。言い方を変えれば、アジアでは地球上の他の地域よりも外発的動機付けが高く、恐怖心や報酬によって行動が左右されやすい傾向があるという結果です。香港やミャンマーなどの世情を考えると心が痛む思いです。
世界のEQは、図2021-12-1に見るように、2011年から2016年まで次第に低下した後、2017年から大きく上昇しています。世界の各地で「社会性と情動の学習」などのプログラムの重要性が認識されて広まった結果と感じました。けれども、日本ではそうした教育潮流は広がっていません。その結果、アジアの一員としてもEQの水準が世界よりも低くなっているのではないかと危惧しました。
また、2020年は新型コロナウィルスの感染や気候変動が世界各地で猛威を振るった年です。その結果として2019年に比べてEQの水準が2014年のレベルまで低下しています。その新たな脅威として次の3点があげられています。
- 想像力の低下:新型コロナウィルスの影響もあって、ストレスと孤立が増えたことで、新しい可能性を見つけるための情動の使い方が制限されてしまったと考えられています。
- ストレスと耐性:世界の人々の35%とアメリカ人の55%が懸念されるほどのストレスレベルにあり(Gallup 2019)、新型コロナウィルスの広範囲な流行はストレスを14%増加した(Gallup)と報告しています。
- 孤立による協調の困難:アメリカの61%の人が孤独を感じており、情緒的な苦痛は3倍になっているという報告が紹介され、コミュニティに属しているということが協調の基盤であるとしています。そのためには「共感」の重要性が指摘されています。
図2021-12-1 EQの2011年から2020年までの推移
(Six Seconds 2021 STATE OF THE HEART 2021 TRENDS IN EMOTIONAL INTELLIGENCE GLOBAL REPORT. より引用)
他にも、「State of the Heart 2021」には、性別と職階によるEQの違いや若者と働き盛りの人々と老人という世代別のEQの特徴、さらには産業別のEQの特徴などが分析をされています。関心のある方は、次のURLからレポート全文をダウンロードできますので参考にしてください。
Six Seconds 2021 STATE OF THE HEART 2021 TRENDS IN EMOTIONAL INTELLIGENCE GLOBAL REPORT. https://www.6seconds.org/emotional-intelligence/research/?fbclid=IwAR0dYjT7NiyufQNfratsV5kS4NzM1lt58_RvvAq0RPTtX9l3kJRQvNOR8Ew
また、このレポートに関するミーティングの様子がYouTubeで紹介されています。こちらも参考にしてください。
State of the Heart 2021 – What’s Happing to the World’s Emotional Intelligence?: https://www.youtube.com/watch?v=tzoNFqSGu_s