今回は、Watzlawick(1967)による次のコミュニケーションの公理の4について考えます。
- コミュニケーションをしないことは不可能である。
- コミュニケーションには情報と、情報に関する情報の2つのレベルがある。
- 人間関係は、コミュニケーションの連鎖の「パンクチュエーション(Punctuation)」によって規定される。
- 「デジタルモード(Digital)」と「アナログモード(Analogic)」の両者が使用される。
- コミュニケーションの交流は、すべて、「対称的 (Symmetrical)」または「相補的 (Complementary)」のいずれかである。
コミュニケーションの「デジタルモード」は、典型的には音声や文字や記号になどの言語によるコミュニケーションです。こうした言語は、現実世界の一部を抽象化したものです。そのため、使われ方にいくつかのレベルがあることに注意が必要です。
レベル1「事実の報告」:現実世界(現地)と表現された言葉(地図)の対応が、他の人が観察・測定可能な形で表現されたもの。例えば、「私があいさつしたのに、相手は返事をしなかった」など、他の人も観察可能な行動の言葉で表現されているものです。
レベル2「推論」:現実世界(現地)の情報に基づいて、人が推測した形で表現されたもの。例えば、「相手は私のあいさつに気づかなかった」など、相手の気づきを直接観察することはできませんが、観察した事実から推測された言語表現です。
レベル3「断定」:現実世界(現地)の情報の断片から感じられた人の主観に基づいて表現されたもの。例えば「相手は私を嫌っている」など、その根拠が極めて稀薄な言語表現です。このレベルには、もう少し自覚的な表現である「邪推」や「思い込み」、あるいは排他的な感情が込められた「偏見」なども含まれます。
すべてのコミュニケーションがレベル1の事実の報告でなければいけないわけではありません。ただ、自分の言語表現がどのレベルにあるのか自覚しておくことが大切だと感じます。私は、根拠が少ない場合の推測では「一部の情報だけなのでよくわかりませんが、私は○○と推測しました」と表現したり、さらに根拠が希薄な時は「これは私の偏見かもしれませんが、○○ではないかと感じました」などと表現したりします。こうして、現実世界(現地)の別の情報による修正の余地を残しておきます。
次回は、コミュニケーションの公理の4のアナログモードについて考えていきます。
参考文献
- Watzlawick、P.、 Beavin、J.E. Jackson、D.(1967) : Pragmatics of Communication. W Norton、 N.Y.