コラム

人間関係のスキルRelationship skills

  1. コミュニケーションをしないことは不可能である。
  2. コミュニケーションには情報と、情報に関する情報の2つのレベルがある。
  3. 人間関係は、コミュニケーションの連鎖の「パンクチュエーション(Punctuation)」によって規定される。
  4. 「デジタルモード(Digital)」と「アナログモード(Analogic)」の両者が使用される。
  5. コミュニケーションの交流は、すべて、「対称的 (Symmetrical)」または「相補的 (Complementary)」のいずれかである。

 今回は、人間関係のコミュニケーションに関する公理の最後の5番について考えます。まず最も単純な人間関係の二者関係について考えます。

 夫婦であれ、親子であれ、あるいは集団同士であれ、二者が関係を持ち始めるとそこに特有のコミュニケーションの関係パターンが生まれます。それは、「対称的 (Symmetrical)」か「相補的 (Complementary)」です。公理の3で、人間関係はコミュニケーションの連鎖の「パンクチュエーション(Punctuation)」によるという例を次のように述べました。

花子さん:太郎さんに文句を言う

⇒太郎さん:会話を避ける

⇒花子さん:応答しないことに文句を言う

⇒太郎さん:花子さんと会話する場面を避ける

 このような、一方(花子さん)の積極的な態度に対して、他方(太郎さん)が受動的な態度をとり、それが花子さんのより積極的な態度になり、それに応じて太郎さんがより受動的な態度をとる関係が「相補的 (Complementary)」関係です。典型的には母親と幼児の関係があげられます。そこには、二者間に地位の差がある点に特徴があります。

 それに対して、次のようなコミュニケーションの連鎖の「パンクチュエーション(Punctuation)」は、「対称的 (Symmetrical)」関係です。

花子さん:太郎さんに文句を言う

⇒太郎さん:文句を言う花子さんに文句を言う

⇒花子さん:口答えする太郎さんに怒る

⇒太郎さん:怒る花子さんに対して怒る

 一方(花子さん)の積極的な態度に対して、他方(太郎さん)が同様な積極的な態度をとり、それが花子さんのより積極的な態度となり、それに応じて太郎さんがより積極的な態度をとるという関係です。典型的には、思春期の青年の仲間関係があげられます。そこには、二者間の行動に同等の地位があるかのような特徴があります。

 現実の人間関係では、時と場合によって対照的関係と相補的関係の両者が見られます。花子さんと太郎さんの間に生まれた赤ちゃんの世話に関しては母親である花子さん優先型の相補的関係が生じるかもしれません。また、太郎さんの仕事関係の社交場面では太郎さんの立場を優先した相補的関係が生じるかもしれません。そして、家計や家事についてはお互いの意見を率直に言い合う対称的関係が生まれるかもしれません。

 夫婦と子どもの三者関係や祖父母を加えた多人数の家族関係などは、より複雑なシステムですが、そこにも、「リダンダンシー(Redundancy)」と呼ばれる繰り返される特有のコミュニケーションの相互作用パターンが生まれます。これに気づくことが人間関係の問題解決の役に立ちます。

 

参考文献

  • Watzlawick、P.、 Beavin、J.E. Jackson、D.(1967) : Pragmatics of Communication. W Norton、 N.Y.