肯定的な人間関係を発展させる次の3点のうち、3番目の人と人のきずなについて考えます。
- 自分を好きであること。
- 相手と体験共有的な交流を持てること。
- 人と人のきづながあること。
これは、相手に関心を寄せて、自分と相手の視点、考え、感情を理解し尊重して、一緒に生きていくことです。交流分析では、対人関係に関する次の4つの基本的構えをあげています。
(1) I’m not OK. You’re OK.
(2) I’m OK. You’re not OK.
(3) I’m not OK. You’re not OK.
(4) I’m OK. You’re OK.
(1) “I’m not OK. You’re OK. “の構えは、相手の強い力や立場に対して、自分の感情や欲求を抑え相手に合わせる構えです。これは、他人に比べて自分が無力で劣っているという考え方です。しかしながら、自分の感情や要求を抑えた鬱屈した気持ちや不満、さらには妬みや恨みから仕返しという反応的攻撃性の行動を引き起こす危険性もはらんでいます。
(2)“I’m OK. You’re not OK. “の構えは、自分の感情や欲求を優先して、相手の感情や欲求を尊重しない構えです。これは、自分は能力があり正しくて、相手は能力がなく劣っているという考え方です。典型的には自己中心的な利益追求を狡猾に行う能動的攻撃性の行動が当てはまります。「力による攻撃が望ましい結果をもたらす」という肯定的な評価をする傾向があります。
(3)“I’m not OK. You’re not OK. “の構えは、自分の感情や欲求が否定された虐待などの体験から、自分の感情や欲求を素直に感じることが出来なくなるとともに、相手の感情や欲求を推測することもできなくなっている状態です。人生を無価値、何らよいものはないとする考え方です。社会から孤立しており、自分も他人も否定して社会に対する自爆テロなどの行動を引き起こす危険性も考えられます。
(4)“I’m OK. You’re OK. “の構えは、自分の感情や欲求とともに、相手の感情や欲求も尊重する構えです。これは、自分と他人の価値を認め、末永く一緒に生きていこうとする社会的存在としての人類の存続を求める考え方です。この構えは、自分の感情や欲求に気づく(Self Awareness)学習や相手の感情や欲求を推測する(Social Awareness)学習と共に、自分の感情や欲求を調整する(Self Management)学習を生活の中で実践して身につける実践知の積み重ねによって形成できるものです。
「人と人のきづながあること」は4番目の““I’m OK. You’re OK. “の構えによって支えられています。
このことは「フェア」の概念によっても表すことが出来ます。「フェア」とは、権利、価値、負担を平等に分かち合うことです。そのためには、お互いによい方法を選んで解決していくことができるスキルが必要です。
ひとりひとりの立場によって、権利、価値、負担の感じ方が違います。そのため、フェアの基準は人によって異なります。権威者が何かの基準でフェアを判断することはできません。お互いの気持ちを理解し合い、後で恨んだりすることがない、お互いに納得できるやり方を相談して、合意して、選択して、実行する問題解決スキルが必要です。次の3つのフェア分配について考えれば、関係者の感情や欲求や好みによって解決方法が変わってくることが想像できるでしょう。
- リンゴ3個を3人で分ける
- リンゴとみかんとバナナを3人で分ける
- 掃除と洗濯と料理の仕事を3人で分ける