今回から、人間関係の「問題解決スキル」を考えていきましょう。人間関係の問題にはどんなことがあるでしょう。WHOによる国際生活機能分類(ICF)では「活動と参加」の「対人関係」に次のような項目があげられています。
<一般的な対人関係>
基本的な対人関係(敬意と思いやり、感謝、寛容さ、批判など)
複雑な対人関係(対人関係の形成・終結、行動制御、社会的ルールに従った対人関係、社会的距離の維持など)
<特別な対人関係>
よく知らない人との関係
公的な関係(権限のある人、下位の立場にある人、同等の立場にある人との関係など)
非公式な関係(友人、隣人、知人、同居者、仲間との非公式な関係など)
家族関係(子ども、親、兄弟姉妹、親族との関係など)
親密な関係(恋愛関係、婚姻関係、性的関係など)
さて、以上の対人関係のいずれにおいても「全く問題なく生活している」という人はいないのではないでしょうか?わたくしは、これまで人間関係のトラブルは困ったことで、ない方が良いと考えてきました。おとぎ話では「シンデレラは王子さまと結ばれて末永く幸せに暮らしました」となっています。私も妻とは恋愛結婚をして幸せに暮らすつもりでしたが、夫婦関係はトラブルの連続でした。仕事や家事や家計や休日の過ごし方、料理をすれば包丁を置く場所やゴミの処理の仕方など、考え方の違いで何度もぶつかりました。同じ価値観と考え方をしてトラブルなく過ごすことはできないものかと何度も思いました。
トラブルで困ることは良くないことだと考えると、トラブルの相手を一方的に責めたり、「自分は困ってなんかいない」と主張したくなったりします。また、困って助けを求めるのは人より劣っていると感じて、トラブルや困難を率直に表現することが難しくなったりします。
ここで、前回の「文化的なちがいを解決するスキル」を思い出してください。感じ方、考え方、価値観を一致させることで、トラブルを起こさないことがよいのでしょうか?感じ方、考え方、価値観の違いは「問題」なのでしょうか?人は文化的にも生理学的にも感じ方も考え方も価値観も違うのが普通です。そこにトラブルが生まれるのは自然な現象なのです。
大切なことは、お互いの違いを理解し、フェア(公正)な問題解決方法を実行できることです。そのためには、次の準備スキルが大切と思います。
- 自分と相手の情動(身体の反応)に気づくスキル
- 自分の得意と苦手、他人との違いに気づくスキル
- 情動(身体の反応)を和らげる落ち着くスキル
- 困難があっても悪くないと考えて、希望を持って対処するスキル。
そして、私は、トラブルが起こった時に自分に言い聞かせるようにしています。「トラブルきたきた!(問題解決の)チャンスだ!」と。
次回は、具体的な問題解決方法のプロセスについて考えます。
参考・引用文献
- 世界保健機構(WHO)(障害者福祉研究会訳)(2002)ICF国際生活機能分類―国際障害分類改訂版―. 中央法規.
- 社会・援護局障害保健福祉部企画課(2012)国際生活機能分類(ICF)ー国際障害分類改訂版ー. (https://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/08/h0805-1.html).