コラム

人間関係のスキルRelationship skills:チームワークと協調的な問題解決を実践する2

 前回、人間関係のトラブルが起こることは自然な現象で、無くすことはできないと述べました。大切なことは、お互いの違いを理解し、フェア(公正)な問題解決方法を実行することです。今回から、具体的な問題解決方法のプロセスについて考えます。私は、添付ファイルの「問題解決シート」を使っています。

 今回は手順の概要を紹介し、中立的な状況の理解について考えます。

 問題解決のスタートは、「困ったこと」に気づくことです。問題が分からなければ解決することはできませんし、困った状態も変わりません。そして、衝動的にすぐに行動するのではなく、立ち止まって落ち着くことが必要です。

 続いて1から5の解決手順を実行します。括弧の中のセリフはそれぞれの手順におけるキーとなる問いです。

  • 状況の理解:1- a「何があったの?」1- b「どんな気持ち?」1- c「どうしたかったの?」
  • 解決策のアイデアを出す:2「なにができるかな?」
  • 解決策の実施した結果を予測する:3 「それをしたら、どうなるかな?」
  • 解決策を選択しどのように実行するか決める:4「どれをするか決める」(どんな姿勢や台詞でやってみるか、練習する)
  • 結果を振り返る:「やってみて結果はどうだった?」

 「状況の理解」の手順1-aでは、「何があったの」と状況を中立的に理解することが大切です。人間関係のトラブルでは「誰が悪いか」という観点から、誰かを責める行動が良く見受けられます。「○○さんが、私の悪口を言ってひどい!」、「人のものを勝手にとって使う△△さんが悪いんだ!」、「××さんが私を仲間外れにして、許せない!」といった具合です。

 中立的な状況の理解では、「○○さんが、私のことを『◇◇◇◇』と言った。」、「△△さんが、私に断りなく私のものを使っていた」、「××さんが、AさんとBさんとCさんに声をかけていたけれど、私には声をかけなかった」など、客観的で観察可能な言葉で表現することが大切です。

 怒りや落胆などあるいは欲望や衝動などの情動に振り回されてしまうと冷静な判断力は止まってしまいます。以前に述べた、情動の自己管理(Self-management)のスキルを身につけておくことが必要です。

 法令違反のような事態であっても、誰が悪いというよりも法令「○○」に違反した行為が問題として指摘されるのです。故事にも「罪を憎んで人を憎まず」とあります。私事ですが、片側1車線の高速道路で法定速度をまもるトラックの後ろを走っていた時に、追い越し車線のあるところに差し掛かったので前の車を追い越しました。とたんに、横から出てきたパトカーのサイレンで止められたことがあります。「こんな(追い越し車線の)ところで取り締まりするなんてひどい!」と言いたいと思いましたが、警察官から「ダメじゃないですか!」と叱られるのを助長するのもいかがなものかと考えて思いとどまりました。ところが、警察官は「お仕事ですか?ご苦労様です」と穏やかに声をかけてきました。そして、「スピード19km違反でした。免許証をお願いします」と違反については丁寧にきっちり言われました。人を叱るのではなく冷静に「違反行為」を対象にして対応していることに感心しました。もちろん反則切符を切られて罰金を払う羽目になり、免許もゴールドにはなりません。

 一般企業で販売不振などの問題が起こった時も、「営業がなってない」とか「製品開発が良くない」、「宣伝が悪い」などの犯人捜しが始まることがあります。けれども、誰かを批判しても問題は解決しません。顧客の好みが変わったのかもしれませんし、他社の安い商品の登場によるものかもしれませんし、世界全体の景気が悪いのかもしれません。企業が市場データの収集と分析にお金をかけるのも冷静な「状況の理解」の重要性を示しています。

 次回は、「状況の理解」の1- b「どんな気持ち?」1- c「どうしたかったの?」について考えます。