「問題解決シート」の問題解決方法のプロセス1から5の手順の中の、2.解決策のアイデアを出す:「なにができるかな?」について考えます。
- 状況の理解:1- a「何があったの?」1- b「どんな気持ち」1- c「どうしたかったの?」
- 解決策のアイデアを出す:2「なにができるかな?」
- 解決策の実施した結果を予測する:3 「それをしたら、どうなるかな?」
- 解決策を選択しどのように実行するか決める:4「どれをするか決める」(どんな姿勢や台詞でやってみるか、練習する)
- 結果を振り返る:「やってみて結果はどうだった?」
トラブルに出会った時、「どうしたらいいのか?」と良い結果につながる正解を求める人が多いと感じています。それに対して「○○したら・・・」とアドバイスしても、「でも・・・・」と受け入れられなかったり、「やってみたらうまくいかなかった」と言われたりすることが多いように思います。トラブルはさまざまな状況でさまざまな人の気持ちの違いから生まれますので、解決できる正解を特定できることは少ないと思います。トヨタ自動車では「解決」できない問題に対して「改善」という対策を取っています。この「KAIZEN」という言葉は国際的にも通用する言葉になっています。
解決策ないしは改善策のアイデアを出す方法としては、「ブレーンストーミング」が世界で一番使われています。アメリカの広告会社の副社長だったアレックス・オズボーン氏が創始した方法で、ひとつの問題に集団でたくさんのアイデアを出すものです。その原則は次の4つです。
ア、批判厳禁:良いアイデアも悪いアイデアも自由に言ってよい。自由な発想を広げるための条件です。セカンドステップで「うっかりぶつかって相手をケガさせた時」に相手に何と言うかたずねた時に、ひとりの発達障害の児童が「『死んでろ、バカヤロ!』と言う」アイデアを出したことがあります。「それもひとつのアイデアですね」と応答するのが原則です。抵抗感があったものの私は原則に従ってそう応答しましたが、「この応答のままでよいのだろうか」とも思って「ケンカをするにはよい方法ですね」とつけ加えました。そして、「セカンドステップなんか役に立たないのではないか」と悩みました。2週間後、その子と母親がやってきて、「先生、うちの子、生まれて初めて『ごめんなさい』と言ったんです」と母親が嬉しそうに報告してくれました。その子どもは、「ごめんなさい」の対応を知らなかったわけではありません。けれども、トラブル状況を示された時に身体が反応してしまい「死んでろ、バカヤロ!」というアイデアが頭に浮かんで、正直に言ってしまったのでしょう。その後のセカンドステップの学習を通じて、実生活では自分から「ごめんなさい」の対応を選んだのだと感じました。
イ、自由奔放:どんなバカな発想を言ってもよい。どんなアイデアもバカにされない許される安全な雰囲気で発想を広げる条件です。
ウ、質より量:良いアイデアを求めることよりもたくさんのアイデアを出すことを大切にします。量が質を生み出すという考え方です。
エ、結合改善:ほかの人のアイデアに触発されて、さらにアイデアを出して発想を広げるものです。「発想力のピークは18歳」と聞いたことがあります。あとは年齢とともに低下するばかりです。それを克服するのが「集団でアイデアを出す」という方法です。例えば「約束に30分遅れてきた友達」にどんなふうに言うか、個人で3つアイデアを書いてもらいます。その後、数人で個人個人のアイデアを見せ合います。他の人のアイデアを見た時にパッとひらめくような感覚を体験することができます。発想力の限界を突破した瞬間です。
私は、カウンセリングでいろいろなトラブルへの対応を質問された時に、原則、望ましくないアイデアを一つ入れて、最低3つのアイデアを考えて書いてみるようにしています。相手はそれに触発されて、3つのアイデアのどれでもない独自のアイデアを思いつくことをたくさん経験しています。