コラム

人間関係のスキルRelationship skills:チームワークと協調的な問題解決を実践する5

 今回は、問題状況の中立的な理解と自分と他者の感情や意図の気づきをもとに、ブレーンストーミングで考えた様々な対策について、問題解決シートの3.「それをしたら、どうなるかな?」と解決策あるいは改善策の結果を予測します。

  1. 状況の理解:1- a「何があったの?」1- b「どんな気持ち」1- c「どうしたかったの?」
  2. 解決策のアイデアを出す:2「なにができるかな?」
  3. 解決策の実施した結果を予測する:3 「それをしたら、どうなるかな?」
  4. 解決策を選択しどのように実行するか決める:4「どれをするか決める」(どんな姿勢や台詞でやってみるか、練習する)
  5. 結果を振り返る:「やってみて結果はどうだった?」

 結果を予測するためには、単に頭で考えるだけでなく、ロールプレイングなどによる体験的な模擬実験(シミレーション)が役に立ちます。では、解決策あるいは改善策の予測が協調的な問題解決につながるかどうかは、どのような基準で判断したらよいでしょうか。

 第1に「安全か?」という基準が考えられます。国連の「人間の安全保障委員会」の最終報告書(2003)の、「恐怖」と「欠乏」が状況を悪化させる危険性を高め、「保護」と「能力強化」が「恐怖と欠乏からの自由」につながるという指摘はすでに述べました(コラム2020.2. SELと世界平和)。また、緊急事態で必要な対処行動は、危険な場面から離れて安全な場所で「アラーム警報」が収まって、身体が落ち着くまでクールダウンをすることが大切なことも述べました(コラム2020.1自己管理Self-management 緊急対処(1))。危険な結果が予測される解決策は、協調的な問題解決にはつながらないでしょう。

 第2に「希望にかなうか?」という基準が考えられます。解決策ないしは改善策の中には、困難な状況に対する恐怖心や臆病さから当初の自分の気持ちや意図と反する結果が予測されるものがあります。これは、人間関係を豊かにするスキル「自分を好きであること」(コラム2022.6. 人間関係のスキルRelationship skills 人間関係を豊かにする1)に反しています。「負けない事、投げ出さない事、逃げ出さない事、信じぬく事」という歌詞は、大事MANブラザーズバンドの「それが大事」という曲ですが、これまでの自分を認めて愛すること、これからの自分に価値があると感じる「希望」の大切さを物語っているように感じます。

 第3に「フェアか?」という基準が考えられます。単純に「法令違反でないか?」という基準で考えてもよいでしょう。加えて、「フェア」とは、権利、価値、負担を平等に分かち合うことです。そのためには、自分の感情や欲求とともに、相手の感情や欲求も尊重すること。交流分析で言うところの“ I’m OK. You’re OK.” の態度かどうかが大切です(コラム2022.8. 人間関係のスキルRelationship skills 人間関係を豊かにする3)。これは、自分と他人の価値を認めて「人と人のきづな」を結び、社会的存在として協調的な問題解決をはかり末永く一緒に生きていこうとする人類の存続を求める姿勢です。

 第4に「相手と体験を共有できるか?」という基準が考えられます。豊かな人間関係につなげるには、相手と体験共有的な交流が持てることが大切です(コラム2022.7. 人間関係のスキルRelationship skills 人間関係を豊かにする2)。そのためには、なによりも相手に関心を寄せ、お互いを利用し合う道具的な関わりよりも、体験と情動を共有できる関わりを持てる協調的な問題解決が大切です。

 第1から4までの全てを満たす解決策あるいは改善策は見つからないかもしれません。けれども、こうした基準で解決策ないしは改善策を検討することで、より協調的な問題解決につながる可能性の高い案を選ぶことが出来ます。