前回は、解決策を選ぶ時の次の4つの基準について考えました。
- 安全か?
- 希望にかなうか?
- フェアか?
- 相手と体験を共有できるか?
今回は、問題解決シートの手順4. 解決策を選択しどのように実行するか決める:4「どれをするか決める」(どんな姿勢や台詞でやってみるか、練習する)について考えます。
- 状況の理解:1- a「何があったの?」1- b「どんな気持ち」1- c「どうしたかったの?」
- 解決策のアイデアを出す:2「なにができるかな?」
- 解決策の実施した結果を予測する:3 「それをしたら、どうなるかな?」
- 解決策を選択しどのように実行するか決める:4「どれをするか決める」(どんな姿勢や台詞でやってみるか、練習する)
- 結果を振り返る:「やってみて結果はどうだった?」
解決策をどのように実行するか練習するには、ロールプレイングが役に立ちます。解決策の実行の仕方に模範的なモデルがあったとしても、誰もが全く同じ姿勢と動作と表情と言葉かけで行わなければならないわけではありません。また、模範的なモデルのやり方をしても、相手と状況と実行のタイミングなどによっては必ずしも「成功」するとも限りません。
人は、身体的な特徴が一人ひとり違っています。また、どんな姿勢を取るか、どんな表情をするか、いつどんなタイミングで相手に視線を向けるか、どんな言葉遣いをするか、どんな声のトーンで話しかけるか、一人ひとり違う独特の振る舞い方があります。解決策を実演するときには、その人が持っているその人らしい身体を使って、その人がそれまでに身につけてきた振る舞い方が現れます。ロールプレイングでは、一人一人が持っている多様な振る舞い方を生かしながらも、実演して「その結果どうなったか」を実際に体験することが大切です。むしろ、「失敗」することを通じて様々な振る舞い方の多様性を学ぶ体験学習をすることが役に立ちます。そのためには、参加者が「失敗してもよい」批判されない安全な環境を指導者が用意することが必要です。また、多様性を広げるためには、モレノが創始したサイコドラマのいろいろな技法を使うことが出来ます。
ロールプレイングの進め方では、次のような基本的な手順が考えられます。
- ウォーミングアップ
参加者の緊張をとり、自由で自発的で創造的な振る舞い方を促進するための準備を整える事が大切です。誰もが楽しめるゲームなどを行ったりします。
- テーマの設定と指導者によるモデル演技
選んだ解決策について、まずは指導者がモデルとなって演じてやって見せることが必要です。演技の上手い下手を評価するのではなく、どのように演じるとどんな感じになるのか楽しむ態度を参加者に分かってもらうことが大切です。
- 場面と配役を設定する
問題状況の場面設定をして、参加者の配役を決めます。その際、自発性の原則から希望をとって配役を決めることが大切です。見ている参加者は観客として観察学習による体験学習をします。
- テーマの役割演技を行う。
演じる行動や言葉や態度は、簡単なものから、次第に複雑なものへと段階的に展開すすめます。指導者の役割としてロールプレイングの「はじめ」と「終わり」の合図を「よーい、スタート」、「はい、カット」などと明確に示します。演じ方に良い悪いもありません。また必ずしも筋書き通りに進むとは限りません。さまざまな感じ方や行動の仕方の多様性を体験することが大切です。さらに、ふりかえりの後で、役割や演じ方を変えて何度でも繰りかえしロールプレイングを行うことで、振る舞い方の多様性をさらに広げることが出来ます。
- ふりかえりを行う
ロールプレイングを行ってあるいは観客として見て感じた体験や気持ちを「どのような行動ができましたか?」「やって、どのように感じましたか?」などと質問して振返ります。応答に対しては批判しない受容的対応が重要です。特に、できている部分(行動や態度)に注目して共有することが大切です。
次回は、問題解決の結果を振り返ることについて考えます。