これまで、CASEL’S SEL FRAMEWORK(図)の1~5の内容について考えてきました。今回からは、その外側にある学級や学校、家族やコミュニティにおけるSELの実践について考えていきます。
図 CASEL’S SEL FRAMEWORK
https://casel.org/fundamentals-of-sel/what-is-the-casel-framework/ (2023/10/31検索引用)
学級でSELを実践する時に、日本の学校教育の学習指導要領の枠組みでは、特別活動、特別の教科道徳、総合的な学習の時間、ないしは生徒指導として位置づけて実施することになります。
特別活動の「学級指導」でSELを実践する時は、「日常の生活や学習への適応と自己の成長及び健康安全」の項目イ「よりよい人間関係の形成」や「一人一人のキャリア形成と自己実現」の項目ア「現在や将来に希望や目標をもって生きる意欲や態度の形成」や項目イ「社会参画意識の醸成や働くことの意義の理解」などの内容が当てはまります。しかし、学級指導は年間35時間実施することになっているものの、その多くの時間を遠足や修学旅行、入学式、体育祭、避難訓練などの行事に使われてSELの学習時間がとられていない実態がみられます。
特別の教科道徳でSELを実践する時は、「A 主として自分自身に関すること」、「B 主として人との関わりに関すること」、「C 主として集団や社会との関わりに関すること」などの内容が当てはまります。しかし学習指導要領に示された項目は、善悪の判断、正直、節度、親切、思いやり、感謝、礼儀、規則の尊重、公正、公平、社会正義など「責任ある社会的行動の選択」ばかりがあげられています。その基盤となるSELの「自己への気づき」、「他者への気づき」、「情動の自己管理」、「問題解決スキル」を身につける学習が必要です。
学級でSELを生徒指導として実践する時は、「発達支持的生徒指導」として全ての児童生徒を対象に実践することが基本です。しかし、実際には「課題予防的生徒指導」や「困難課題対応的生徒指導」として特定の問題への対処ニーズに対して、断片的な使われ方をされていることが少なくありません。
CASELは、学級の全ての子どもたちに対する効果的なSELアプローチとして、SAFEの略称で示される科学的にも実証された4条件を示しています。
- Sequenced(系統的なSELプログラム):スキルの発達を促進する活動が相互に関連して順序だてられている。
- Active(活動的な学習):児童生徒が新しいスキルをより学習できるように活動的な学習形態で行う。
- Focused(スキル開発に時間をかける):自分に対するスキルと社会的スキルの発達に注目して時間をかける。(7~8時間以上)
- Explicit(SELを目的とする):目的を社会性と情動のスキルに特定する。
こうした条件を満たしたSEL実践が確実に成果をあげています。
参考・引用文献
- CASEL. What Is the CASEL Framework?:https://casel.org/fundamentals-of-sel/what-is-the-casel-framework/ (2023/10/31検索引用)
- 文部科学省(2017)小学校学習指導要領.
- 文部科学省(2022)生徒指導提要.
- CASEL. SEL in the Classroom. https://casel.org/systemic-implementation/sel-in-the-classroom/ (2023/10/31 検索)