アメリカのNPO法人CASELは、「社会性と情動の学習Social-Emotional Learning」の要素として、次の5つをあげています。
- Self-awareness
- Self-management
- Social awareness
- Relationship skills
- Responsible decision-making
今回から“Self-awareness”について考えてみます。
CASELでは次のように説明しています。
“The ability to accurately recognize one’s emotions and thoughts and their influence on behavior. This includes accurately assessing one’s strengths and limitations and possessing a well-grounded sense of confidence and optimism.”
“emotions”という用語の訳は「情動」ですが、「感情」と訳されている場合も少なくありません。けれども「感情」に対応する英語としては”affect”あるいは”feeling”が使われます。「情動」の心理学事典による説明は多々ありますが、日本神経科学学会の事業として位置づけられた脳科学辞典では、次のように説明されています。
「情動(emotion)は、生体に入力された感覚刺激への評価に基づいて生ずる
- 生理反応(自律神経系、免疫系、内分泌系の反応)
- 行動反応(接近、回避、攻撃、表情、姿勢など)
- 主観的情動体験
の3要素からなる。この情動は短期的に生じる原初的な感情で、比較的強い反応と定義されており、中長期的にゆるやかに持続する強度の弱い気分(mood)とは区別される。また情動と気分の両者を総称して感情と定義することもある。しかしながら、情動と感情との区別にかかわる厳密な定義はなく、研究領域や研究者間によってその扱いが異なる点に注意が必要である。」
(https://bsd.neuroinf.jp/wiki/情動 2015/5/21 検索引用)
情動に関するSelf-awarenessは、自分の生理反応、行動反応、主観的情動体験を正確に理解する力と考えられます。「自分のことは自分が一番よく知っている」と思っている人は多いと思います。けれども、自分では意図的に操作できない自律神経系や免疫系の反応をどのくらいの人が自覚できるでしょうか。意図的に操作できる随意筋による行動は生理反応よりも自覚しやすいと思われますが、自分の姿勢や表情や声の出し方まで正確に理解している人がどのくらいいるでしょうか。さらには、それらの生理反応や行動反応を主観的にどのように体験するかは、その時の出来事に特有のこれまでの個人の成育史によって異なると考えられます。主観的情動体験が自分のどのような経験と結びついているのか自覚できる人はどのくらいいるでしょうか。
次回は、こうした情動の自己理解を促進する方法についてみてみたいと思います。